アマダ「[ビアメカニクス株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ]
アマダ[ビアメカニクス株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ]

アマダは2025年4月、ビアメカニクスの全株式取得を発表しました。発表時の取得価額は510億円。同年7月に同社をグループに迎えています。

ビアメカニクスが得意とするのは、半導体パッケージ基板やプリント基板に、微細な穴を正確かつ高速にあける加工です。AI半導体の性能向上を支える高密度実装と、工作機械の技術が交わる領域でもあります。

板金加工機械のアマダが、なぜ半導体関連企業を買収したのでしょうか。

その接点となるのが、「穴をあける技術」です。

今回は、TSVとの関係を整理しながら、アマダが取り込んだ技術の価値を見ていきます。

1.ビアメカニクスとは? 日立の工作機部門から生まれた会社

ビアメカニクスは、1968年に日立製作所の工作機部門が分離・独立して誕生した「日立精工」を前身とする会社です。

その後、1999年に日立ビアメカニクスへ社名を変更。2013年に日立グループを離れ、現在のビアメカニクスとなりました。投資ファンド傘下を経て、2025年にアマダグループに加わっています。

ビアメカニクス「[歴史沿革]

同社は1971年に基板加工設備の初号機を送り出しており、基板の高密度化、多層化、穴の小径化に長年対応してきました。

現在の主要製品は、機械的に穴をあけるドリル穴明機と、レーザ加工機です。加工対象には、電子機器の部品を載せるプリント基板に加え、半導体チップと外部の基板をつなぐパッケージ基板があります。

ビアメカニクス[製品情報]
ビアメカニクス[製品情報]

工作機械で培った「狙った位置に工具を動かし、材料を正確に加工する技術」が、電子回路の微細な接続構造を作る技術へと発展してきた会社、と捉えると分かりやすいと思います。

2.そもそもビアとは? TSVとパッケージ基板の違い

ビアとは、上下の配線などを電気的につなぐための接続構造です。

半導体や基板の配線は、平面上だけで完結しているわけではありません。配線を何層にも重ね、それぞれの層を縦方向につなぐことで、限られた面積に多くの回路を収めています。

パッケージ基板では、絶縁層に穴をあけ、その内側に銅などの導電部分を形成して、異なる層の配線を接続します。穴をあけただけでは、まだ電気は流れません。

高性能半導体に使われるビルドアップ基板は、絶縁層と配線層を順次積み重ねて作られます。味の素のABFは、その絶縁材料の代表例です。レーザ加工と銅めっきを組み合わせることで、微細な配線・接続構造を形成します。

味の素[Ajinomoto Build-up Film(ABF)](https://www.ajinomoto.com/innovation/our_innovation/buildupfilm)
出典:味の素[Ajinomoto Build-up Film(ABF)](https://www.ajinomoto.com/innovation/our_innovation/buildupfilm)

一方、TSVは「Through Silicon Via」の略で、シリコンを貫通する電気的な接続構造を指します。

背景にあるのは、チップ同士を短い距離で、多数の経路を使って接続したいという要求です。チップの外側を回り込む接続に対し、シリコンを縦に貫く接続を使えば、積み重ねたチップ間を直接つなげます。HBMのような積層メモリや、先端パッケージで重要となる技術です。

Lam Research「[Syndion製品ファミリー]

両者とも「縦につなぐ」技術ですが、穴をあける対象と製造工程が異なります。

ポイント

  • TSV:シリコンを貫通する電気的接続

  • 基板ビア:基板内の配線層を結ぶ電気的接続

  • ビアメカニクスの主力:パッケージ基板、プリント基板向けの穴あけ装置

3.AI半導体の進化で、なぜ穴あけ技術が重要になるのか

AI半導体では、演算能力だけでなく、メモリとの間で大量のデータをやり取りする能力も重要です。

そのため、複数のチップを組み合わせるチップレットや、メモリを積み重ねるHBMなど、実装技術によって性能を高める動きが進んでいます。先端パッケージは、チップ同士を接続する重要な技術領域になっています。

Lam Research[What Is Advanced Packaging?](https://newsroom.lamresearch.com/what-is-advanced-packaging-semi-101)」
出典:Lam Research[What Is Advanced Packaging?](https://newsroom.lamresearch.com/what-is-advanced-packaging-semi-101)」

ここで基板加工に求められるのが、より細かな配線を、正確に接続する能力です。

接続部分を小さくできれば、周囲に配線を通す余地を確保できます。しかし、穴だけを小さくしても、位置がずれて下層の配線を外してしまえば意味がありません。

深さや形状が不適切だったり、加工した部分に残留物があったりすれば、その後のめっきや接続の信頼性にも影響します。基板材料側でも、レーザによるビア形成と、その後の樹脂残渣除去・銅めっきを一連の工程として扱っています。

電子材料事業の成長戦略 ― 味の素ファインテクノ社工場 バーチャル見学会 ―
出典:電子材料事業の成長戦略 ― 味の素ファインテクノ社工場 バーチャル見学会 ―

つまり、装置に求められるのは「小さな穴をあけられる」という能力に加え、それを量産速度で、ばらつきなく繰り返す能力です。

AI半導体の増産が、そのまま一定倍率で穴あけ装置の需要増になるわけではありません。基板の設計、層数、加工方法によって必要な設備は変わります。

それでも、高密度化によって加工の許容範囲が厳しくなるほど、精度と生産性を両立できるメーカーの価値は高まりやすい。ここが、ビアメカニクスに注目する理由です。

4.技術の強みは、レーザ・位置制御・温度管理の組み合わせ

ビアメカニクスの強みを考えるうえで、具体的な製品を見ると理解が進みます。

例えば、パッケージ基板向けCO2レーザ加工機「LC-4NL212」は、自社製ガルバノと、ガラスマスタを用いた位置決め補正技術を採用しています。

ガルバノは、ミラーの向きを高速に変えてレーザの照射位置を動かす仕組みです。穴を一つあけるたびに大きな機械全体を動かすのではなく、光を素早く振り分けることで加工速度を高めます。

そのうえで、基準となるガラスマスタを使って位置の誤差を補正する。高速に動かす技術と、狙った位置へ合わせ込む技術を組み合わせています。同機は2パネル・4ビーム構成で、量産性も重視した設計です。

UVレーザ加工機「LU-4NP212」では、温度管理による穴位置精度の安定化と、独自の光学技術による小径加工を掲げています。さらに、ピコ秒発振器を選択できる仕様です。

ピコ秒は1兆分の1秒。短い時間にレーザを照射する方式で、同社はこの選択肢によって高品質な極小径加工に対応すると説明しています。

精密加工では、温度によるわずかな変化も位置ずれの要因になります。レーザの性能だけを高めても、それを支える機械や光学系が安定しなければ、量産時の精度は保てません。

同社が主要なハード・ソフトを自社開発・内製化していることは、こうした複数の要素をまとめて調整するうえで強みになります。材料や顧客の加工条件に合わせたカスタム対応も、その延長にあります。

公開仕様だけで競合全社に対する性能差までは断定できません。

ただ、同社の競争力を支える具体的な技術として、光学、機械制御、温度管理、補正技術を一体で設計できる点は評価できると考えます。

ポイント

  • 自社製ガルバノによる高速な照射位置制御

  • 位置決め補正と温度管理による加工精度の安定化

  • 複数ビームによる量産性の確保

  • 主要ハード・ソフトの内製による一体設計

5.TSVやガラスへの展開は? 加工例と量産採用を分けて見る

ビアメカニクスの主力は基板加工ですが、シリコンやガラスにも加工技術を展開しています。

公式サイトの微細穴あけ事例には、厚さ400μmのシリコンに直径50μmの穴を加工した例が掲載されています。ガラスへの微細穴あけ事例もあります。

ビアメカニクス 穴あけ 事例

これは、基板加工で培った技術を、異なる材料へ応用できることを示す情報です。シリコン貫通ビアであるTSVや、ガラス貫通ビアであるTGVを考えるうえでも、関連する加工能力といえます。

ただし、シリコンに穴を加工できることと、最先端HBMのTSV量産工程で採用されていることは、分けて確認する必要があります。

HBMなどのTSV形成には、プラズマを使ってシリコンを深く掘るエッチング技術が使われます。Lam Researchは、HBM向けTSVを用途に含む深掘りエッチング装置を提供しています。さらに、電気的な接続を完成させるには、膜形成や金属充填などの工程も必要です。

今回確認した資料からは、ビアメカニクスについて、主要HBMメーカーのTSV量産ラインでの採用や、その売上規模までは確認できませんでした。

現時点で評価の中心に置きたいのは、既存のパッケージ基板加工です。そのうえで、シリコンやガラスへの展開を、今後の採用・事業化を確認する対象として見るのが適切だと思います。

ポイント

  • 主力事業としてのパッケージ基板加工

  • シリコン・ガラスへの微細穴加工の実例

  • 加工実証とHBM量産採用の区別

6.アマダが買ったのは、加工技術と半導体業界への接点

アマダとの組み合わせにも、技術的なつながりがあります。

アマダは板金加工機械に加え、微細溶接・レーザ加工の事業も展開してきました。買収発表では、同社のレーザ技術、自動化設備、サービス・生産体制と、ビアメカニクスの精密穴あけ技術や顧客基盤を組み合わせる方針を示しています。

具体例として挙げられているのが、アマダの微細溶接事業で扱うレーザシステムを、ウエハへのマーキングや樹脂モールドのバリ除去などに展開する構想です。

半導体分野で事業を広げるには、加工できる装置を用意するだけでは足りません。顧客が使う材料や工程を理解し、要求品質を満たし、量産現場で保守できる体制が必要です。

この買収は、そうした顧客との接点や加工ノウハウを、装置技術とともに取り込むものと解釈できます。

2026年5月に発表された「中期経営計画2030」でも、アマダは顧客・市場を起点とするビジネスユニット制を導入し、設計開発から製造、販売、サービスまでを一体で運営する方針を示しています。

微細加工を得意とするビアメカニクスに、アマダの自動化や供給・サービス体制が加わる。この組み合わせを、顧客工場の生産性向上につなげられるかが、相乗効果を見るポイントになります。

7.最新決算で見える期待と課題——技術を利益に変えられるか

技術の魅力を評価する一方で、足元の業績も確認しておきます。

2026年8月6日公表の2027年3月期第1四半期決算では、エレクトロニクスプロセス事業の売上収益は77.33億円、営業損失は14.73億円でした。

会社は、売上が過去の受注に基づいて計上されるため、AI関連を中心とした好調な足元の受注と時間差が生じていると説明しています。受注残を背景に生産能力の拡充と出荷・据付を進め、下期以降の売上拡大を見込むという内容です。

2027年3月期 第1四半期決算説明会
出典:2027年3月期 第1四半期決算説明会

したがって、足元の赤字だけで技術の競争力を判断するのは早計ですが、受注好調だけで収益化が確実になったともいえません。

今後、確認したい点は次のとおりです。

  • 受注残が計画どおり出荷・売上へ転換するか

  • 増産とともに採算が改善するか

  • 微細加工の技術が、顧客の量産設備として継続採用されるか

  • アマダとの共同開発や販売連携が、具体的な案件につながるか

この点、決算説明会後の機関投資家向けQ&Aを見ると経営陣の自信のほどがうかがえます。

2027 年3月期 第1四半期決算説明会 質疑応答(要旨) ビアメカニクス 決算 状況
出典:株式会社アマダ[2027 年3月期 第1四半期決算説明会 質疑応答(要旨)]

私がこの買収で面白いと感じるのは、半導体の高性能化を「材料を正確に加工する」という工作機械の得意分野から支えようとしている点です。

高密度化する基板では、穴を小さくするだけでなく、狙った位置に、高速で、安定して加工する能力が求められます。ビアメカニクスには、それを支える光学・機械・制御の技術が蓄積されています。

510億円の買収を先見の明と評価できるかは、その技術を売上と利益につなげられるかにかかっています。アマダを見る際には、板金加工機械に加えて、半導体実装を支える微細加工事業の進展にも注目したいと思います。