
「ヒロセ電機」というと、コネクタの会社。
スマートフォンや自動車に使われる部品を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、半導体設備投資とのつながりもあります。
半導体を作る装置には、材料を運ぶモータ、動作を指示する制御機器、位置や外観を確認するカメラなどが組み込まれています。その電源や信号の接続部分に使われるのが、コネクタです。
AIや半導体への投資が、こうした産業機器を通じて接続部品にも届く。ヒロセ電機の最新決算からは、その波及が見えてきます。
1.ヒロセ電機とは? 機器の内側と外側をつなぐ会社
ヒロセ電機は、1937年創業のコネクタメーカーです。証券コードは6806。
電気絶縁材料の加工販売から出発し、電子機器に欠かせない接続部品へ事業を広げてきました。
コネクタは、電力や信号が通る部分を、接続・取り外しできるようにする部品です。
身近な例ではケーブルの差し込み口がありますが、用途は機器の外側だけではありません。内部にある基板同士や、基板とケーブルをつなぐ部分にも、小さなコネクタが使われます。
配線を直接固定する方法と比べ、部品やユニットを分けて組み立てたり、故障した部分を交換したりしやすくなる点が特徴です。
機器が小型化しても、内部の接続が不要になるわけではありません。むしろ、多くの機能を限られた空間に収めるため、小型で高密度な接続部品が必要になります。同社も、機器の小型化・多機能化と、内部で使われるコネクタの関係を説明しています。

この技術をスマートフォン、自動車、産業機器などへ横展開していることが、ヒロセ電機の事業の広がりにつながっています。
2.半導体設備投資が、FA機器を経由してコネクタへ届く
半導体設備投資とヒロセ電機の関係を理解するには、装置を構成する機器に目を向けると分かりやすくなります。
FAはFactory Automation、工場の自動化を意味します。生産設備では、おおむね次のような役割分担があります。
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サーボモータ:位置や速度を細かく制御し、搬送・位置決めなどを担う。
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PLC:センサーの情報などに応じて、機械の動作順序を制御する。
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CNC:数値情報に基づき、工作機械などの加工動作を制御する。
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FAカメラ:位置合わせや外観検査に使う画像を取得する。
これらは半導体分野に限らず、幅広い生産設備で使われます。すべてが一台の半導体製造装置に搭載されるという意味ではありません。
モータには電力と制御信号を送り、カメラからは画像データを取り出し、制御機器同士では動作に必要な情報を交換します。その機器内部や機器間の接続に、コネクタが使われます。
ヒロセ電機も、モータ、FAカメラ、CNC・PLC、半導体製造装置など、用途別に製品を提案しています。
この構造を踏まえると、需要が届く経路は次のように整理できます。
実際、2027年3月期第1四半期の質疑応答で、会社はサーボモータ、PLC、CNC、FAカメラなどの需要拡大を説明しています。半導体設備投資とAI需要も追い風とする一方、寄与の定量把握は難しいとしています。
![ヒロセ電機「[2027年3月期 第1四半期決算説明会 Q&A要旨]](/assets/media/64-a9c40afbf982af32.png)
したがって、半導体設備投資の増加率を、そのままヒロセ電機の売上成長率に当てはめることはできません。顧客の生産計画、在庫、搭載する製品、採用シェアによって、波及の大きさや時期は変わります。
それでも、装置の周辺まで見ることで、半導体投資の恩恵を受ける企業の範囲が広がる点は興味深いところです。
ポイント
半導体関連の設備投資拡大
→製造装置・周辺設備の需要増加
→モータ・制御機器・カメラなどへの需要波及
→電源・信号接続に使うコネクタの需要拡大
3.技術の強みは、小型化・高速通信・接続の信頼性の両立
コネクタは、電気が通れば何でもよい部品ではありません。
産業機器では、小さなスペースに収まることに加え、振動やケーブルへの力で外れにくいこと、電気的なノイズがある環境でも信号を伝えられることなどが求められます。
その具体例が、ヒロセ電機の産業機器向け通信コネクタ「ix Industrial」です。
同製品は、小型化、堅牢性、高速通信、ノイズへの耐性を重視した製品です。Cat.6Aに対応し、10Gbpsの通信に対応する製品を展開しています。
例えばFAカメラでは、撮影した画像を制御・処理する側へ送る必要があります。機器を小さくしたい一方で、扱うデータが増えれば、接続部分にも高速通信への対応が必要になります。
同時に、工場の接続部品として、作業時の扱いやすさや外れにくさも確保したい。小型化、高速化、機械的な強さを一緒に成立させるところに、設計の難しさがあります。
ix Industrialは、産業用ネットワーク「PROFINET」の標準インタフェースコネクタとしても認証されています。個別製品の性能に加え、顧客が採用する通信規格に対応することも、利用範囲を広げるうえで重要です。
機器内部の接続でも、小型化の技術が生きています。
基板同士などを接続する「DF40/DF40Tシリーズ」は、端子の間隔が0.4mmの製品です。同社は、ウェアラブル機器やPCに加え、センサー、モータ、組み込みPCでの採用を紹介しています。
こうした製品を見ると、同社の技術的な強みは、接続部分を小さくしながら、用途に必要な電気的・機械的性能を確保する力にあると考えます。
※なお、ここで挙げた製品は技術と用途の例です。直近の受注増を、特定の製品がどれだけ牽引したかまで示すものではありません。
この節の要点
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省スペース化を支える小型・高密度接続
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画像や制御情報を伝える高速通信への対応
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ロック構造やノイズ対策による接続信頼性の確保
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顧客の機器設計と通信規格に合わせた製品展開
4.最新決算では、一般産機向け売上が過去最高に
需要の波及は、業績にも表れています。
2027年3月期第1四半期、つまり2026年4〜6月の連結業績は、次のとおりでした。
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売上収益:620.85億円、前年同期比26.8%増。
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営業利益:133.38億円、同35.6%増。
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親会社の所有者に帰属する四半期利益:73.31億円、同1.4%増。
最終利益の伸びが小さい背景には、子会社の税務調査結果を受けた法人所得税費用の計上があります。営業段階の増益と分けて見る必要があります。
今回のテーマで注目したいのは、一般産機向けの売上です。
会社の説明によると、第1四半期は約206億円、前年同期比約46%増となり、四半期の過去最高を更新しました。特に日本と中国で、FA・産業機器関連の増加が目立ったとしています。
![ヒロセ電機「[2027年3月期 第1四半期決算説明会 書き起こし]](/assets/media/65-bf342f62c2ea9a8a.png)
一般産機向けの規模は、全社売上のおよそ3分の1に相当します。小さな新規事業だけの話ではなく、すでに一定の規模を持つ分野の成長が、会社全体に影響しているわけです。
一方、会社は一部の前倒し発注の可能性も認識しています。また、産業機器向けなどで能力増強を進める一方、材料調達やコスト上昇も考慮して計画を立てています。
![ヒロセ電機「[2027年3月期 第1四半期決算説明会 Q&A要旨]](/assets/media/66-64a60a2ee9358f47.png)
今後は、受注の勢いに加え、増産した製品が売上へつながるか、材料費の上昇を吸収しながら利益を伸ばせるかも確認したいところです。
5.AIサーバーからエッジAIへ、接続技術の用途は広がる
ヒロセ電機とAIの接点は、半導体設備投資からの間接的な波及だけではありません。
会社は、AIサーバー関連の需要が高水準にあると説明しています。また、スマートフォンや車載、FA機器などのエッジAIを成長機会とし、ヒューマノイド向けの引き合い増加にも言及しています。
![ヒロセ電機「[2027年3月期 第1四半期決算説明会 Q&A要旨]](/assets/media/67-c244e1ed744216ef.png)
エッジAIとは、データセンターだけに処理を任せず、端末や現場の機器側でもAI処理を行う考え方です。
例えば、カメラやセンサーから情報を取り込み、機器内部で判断して、モータなどを動かす。その構成では、情報を取り込む部分、演算する部分、動作する部分を接続する必要があります。
小型の機器に機能を詰め込むほど、コネクタにも省スペース性や高速通信、電源供給への対応が求められます。既存の接続技術を新しい機器へ展開できる点が、ヒロセ電機にとっての機会と考えられます。
ただし、引き合いは量産採用や売上の確定を意味しません。ヒューマノイドなどは、具体的な採用や事業規模の開示を待ちたい領域です。
一方、決算説明では、まだ構成比は大きくないものの、ウェアラブル機器でエッジAI関連用途が増えているとの説明もありました。将来の期待に加え、一部では足元の事業にも動きが出ています。
![ヒロセ電機「[2027年3月期 第1四半期決算説明会 書き起こし]](/assets/media/68-2ef22f0fd194b324.png)
ポイント
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半導体設備投資からFA機器への需要波及
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AIサーバー関連での接続需要
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端末や現場機器へ広がるエッジAIの成長機会
ヒロセ電機を調べると、AI投資を支える部品が、サーバーの中だけでなく、半導体を作る工場や、AIを使う機器にも広がっていることが分かります。
同社の強みは、用途ごとの制約に合わせて、小さく、速く、安定してつなぐ製品を用意できることです。
今後は一般産機向けの成長が続くかを確認しながら、AIサーバーやエッジAIで、その技術がどのように採用されていくのかを追いかけたいと思います。
